介護現場とBLS教育
 
 現在、日本は国民の高齢化が急速に進んでおり、病院などの医療機関だけでなく、介護施設数も加速的に増加しています。今や病院だけでは対応しきれておらず、介護施設の利用者も溢れかえっている状況です。今後もこの傾向は続くことでしょうね。
 
 さて、介護施設で勤務する職員は病院とは異なり、様々な経歴をお持ちの方が多いはずです。看護師資格を有する方も勤務されているとは思いますが、おそらく1~数名程度。その他は介護福祉士や社会福祉士などの福祉系国家資格を有する方やホームへルーパー有資格者、もしかしたらデイサービスなどに限っては一般の方が勤務されている施設もあるかもしれません。介護施設は当然のことながら医療機関ではありませんから、病院のように医療資格を有する人がたくさん勤務しているわけではなく、設備に最新の医療機器が配備されることもないはずです。しかし、入所者や利用者の多くはご高齢であったり、何かしらの障害をお持ちの方が多いはずですから、それ相当に急変に立ち会う可能性があります。その際に「医療人ではないから、自分は対応できない」で済まされるはずもなく、施設に勤務しているスタッフである以上、不適切な対応は何かしらの責任を負わされることも予想されます。
 
 今の日本は米国同様にちょっとしたことですぐに訴訟が起こります。一般人であっても施設の職員として入所者や利用者とかかわる機会があれば、非常事態に遭遇した際には適切な対応が求められるのは当然のことです。それは人とかかわる仕事に就く者にとっては避けては通れない責任。早急に看護師を呼んだとしても、駆けつけるまでに何も対応できなければ施設のスタッフとしては失格。入所者や利用者のご家族からすれば、「何やってるんだ!!」という怒りの感情が芽生えてしまうことはやむを得ないでしょう。
 
 特に早急な対応が必要な例としては、やはり「心肺停止」と「窒息」の2つです。この2つの症例は対応がたった数十秒~1分間程度遅れただけでもその後の回復に大きな影響を与えてしまいます。特に食事介助は介護スタッフにおいて必須の業務。窒息しないようにそれ相当の調理方法が選択されているとは思いますが、絶対に窒息を起こさないという保証はありません。自分が食事介助をしていた入所者や利用者が急に喉に食べ物を詰まられてしまった場合、皆さんは適切な対応ができますか?
 
 介護の現場は、「何あれば看護師を呼べばいいや」という考えではもはや務まらなくなりつつあります。医療系資格を有しなくとも、「入所者・利用者の身は自分が守る!!」。そして「自分の身も自分で守る!!」。いざという時の対応はやはり普段からのトレーニングの積み重ねで培っていくしかありません。
 
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