AHA ECCプログラムの特徴
 
 アメリカ心臓協会 AHA は、世界の救急蘇生シーンをリードする国際学会です。5年に一度、心肺蘇生の国際コンセンサスを発表する世界蘇生連絡協議会ILCORの主力メンバーでもあり、世界の蘇生教育展開ではもっとも影響力のある国際組織です。そのAHAが世界で展開する緊急心血管治療 ECC(Emergency Cardiovascular Care)教育プログラムは、世界に類を見ない系統だったシステムで、バイスタンダーCPRから始まり救急初療室での高度な二次救命処置に至るまで一貫したシステマチックな流れ(救命の連鎖)を作りだし、世界の救急蘇生シーンを塗り替えてきました。

 AHA ECCトレーニング・プログラムの守備範囲は多伎に渡ります。家族や友人を守るために市民CPRを啓蒙する Family and Frends コースに始まり、緊急時に対応を求められる市民のための Haertsaver コース、医療従事者など高度なBLSを提供する人たちを対象とした BLS for Healthcare Provider コース、成人の二次救命処置 ACLS Provider、小児の二次救命処置 PALS Provider、さらにはより高度な救急専門医向けの ACLS-EP Provider など、一貫したポリシーとサイエンスに基づいた医療アルゴリズムとその教育プログラムを展開しています。

 日本においては医療従事者向けの専門コースのイメージがありますが、AHA ECCトレーニング・プログラムは市民を含めすべての人をその受講対象としており、地域全体がICUとなるべく、蘇生技術の普及に努めています。

 

■ サイエンス

 アメリカ心臓協会は、心血管障害と脳卒中治療に関する研究を行なう学術団体です。そのエビデンスに基づいた最新のサイエンスをもってAHA ECC教育プログラムは作られています。 先の2005年ガイドライン改定においても、世界に先駆けて新ガイドライン準拠の教育カリキュラム・教材を完成させ、最新エビデンスに基づいた心肺蘇生教育を世界に向けて発信しました。

 

■ 教育学的エビデンス

 AHA教育プログラムの特徴は、医学的サイエンスだけではなく、教育学的観点からも十分な検討がなされている点にもあります。心肺蘇生法教育の目的は、受講生が「蘇生技術を業務として確実にこなすことができる」状態に持ち上げることにあります。そのためには正しい知識を伝えるだけでは不十分です。受講生のニードを引き出し、目的に合わせてモチベーションを高める働きかけをしたうえで、現実の場面を想定したシミュレーション・トレーニングを繰り返し行なうことによって、はじめて技術は使える状態に引き上げられます。

 AHA ECCトレーニング・プログラムは、主にビデオ教材に沿って展開されます。これは世界中で均一なトレーニングを行なうためのものであり、AHAプログラムは世界中のどこで受けても等価なものとして保障されています。

 

■ インストラクター教育

 AHAの教育プログラムは、そうした成人教育の手法に基づいたインストラクション・デザイン設計がされています。またAHAインストラクターは成人教育の手法で指導するための特別な訓練を受けており、受講生は快適な環境で着実な技術習得ができるようにプログラムされています。

 

JSISH-ITCホームページより引用