AHA-ACLSプロバイダーコースとICLSプロバイダーコースの違い |
よく蘇生コースを受講する方から、「ACLSコースとICLSコースの違いがよくわからない」と聞かれることがあります。そこでここではそれら2つのコースの違いを簡単に解説したいと思います。
まずACLSコースはAHA(アメリカ心臓協会)が米国の蘇生ガイドラインの内容に合わせて作成したコースです。つまり米国の蘇生関連事情を十分考慮したコース内容となります。それと比較してICLSコースは日本救急医学会が日本の蘇生ガイドラインの内容に合わせて作成しています。そもそも蘇生において欠かすことのできない重要な項目に関しては複数存在するガイドラインのどれを見ても同じです。しかし一部どちらでも構わないというような少し重要度が下がるような項目に関しては各国の事情や考え方、文化などから多少異なる部分が発生します。ACLSコースやICLSコースにおいても使用されているガイドライン内容はほぼ9割以上が同様となっておりますが、ごく一部においてはそれぞれの国の事情などにより異なった内容が提示されています。
また、学習する内容においても上記の2つのコースは異なります。ICLSコースは「成人の心停止」のみに特化した内容を学ぶことになりますが、ACLSコースにおいては成人の心停止のみならず、「徐脈や頻拍、急性冠症候群、脳卒中、蘇生後(ROSC)のケア」など心停止に至る前や蘇生した後の対応までも含まれています。つまり、ICLSコースよりACLSコースの方が学習範囲が広くなることになります。心停止について特化して学びたい方はICLSコースを、心停止に至る前からのアプローチについても学びたい方はACLSコースがお勧めです。
以下にACLSコースとICLSコースの簡単な違いについてまとめておきます。
コース名 | ACLSコース | ICLSコース |
主催学会 | アメリカ心臓協会(AHA) | 日本救急医学会 |
使用ガイドライン | 米国 | 日本 |
学習内容 | 心停止・徐脈・頻拍・ACS・脳卒中・ROSC後ケア | 心停止症例のみに対応 |
受講しやすさ | 公募コースが多い | 公募コースが少ない |
BLS内容 | スキルチェックのみ(成人) | コース内容に含まれている(成人) |
受講料金 | 高め(¥30,000~50,000程度) | 比較的安価(¥15,000程度?) |
受講日数 | 1.5~2日間での開催が多い | 1日間での開催が多い |
使用教科書 | ACLSプロバイダーマニュアル | 日本救急医学会ICLSコースガイドブック |
なお、現在ICLSコースはコース開催権限を有するインストラクター(コースディレクター:CD)に認定されるために医師免許が必須となっているため、看護師のみでICLSコースを開催することは事実上不可能となっています。また、ACLSコースとICLSコースのどちらを受講するかに関しては上記のように内容が異なっているために「受講希望者の意志次第」であること、そして「どちらのコースの方が優れているかといったコース自体に優劣をつける基準はない」ことをあらかじめご理解ください。
インストラクター認定に関しての内容についても下記のHPをご参照ください。